大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

横浜地方裁判所 平成元年(ワ)2288号 判決 1990年7月19日

原告

富沢幸枝

ほか四名

被告

弘和陸送株式会社

ほか一名

主文

一  被告らは各自、原告富沢幸枝に対し一六八五万三八七五円、原告富沢大輔、原告富沢さやかに対し各八四二万六九三七円ずつ、原告富沢弘、原告富沢ミツ子に対し各七七万円ずつ及びこれらに対する昭和六三年一一月七日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを五分し、その二を原告らの、その余を被告らの各負担とする。

四  原告ら勝訴部分に限り仮に執行できる。

事実及び理由

第一請求

被告らは各自、原告富沢幸枝に対し二五〇〇万円、原告富沢大輔、原告富沢さやかに対し各一一〇〇万円ずつ、原告富沢弘、原告富沢ミツ子に対し各三〇〇〇万円ずつ及びこれらに対する昭和六三年一一月七日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は自動車に轢かれて死亡した者の遺族が被告会社に対し自賠法三条、被告長谷川に対し民法七〇九条に基づいて損害賠償を請求(但し内金請求である。)した事件である。

一1  事故

日時 昭和六三年一〇月二八日午前二時三分ころ

場所 大和市上和田一七七五番地交差点

態様 自転車に乗つて進行中の亡富沢薫に、対向進行する被告長谷川運転の大型貨物自動車(名古屋一一<八二四八)が衝突し、昭和六三年一一月七日死亡させた。

(以上は争いがない。)

2  身分関係

原告富沢幸枝は被害者亡薫の妻、原告大輔、同さやかは子である。原告弘は被害者の父、同ミツ子は母である。(甲二、三)

二  争点

被告は損害額を争うほか、本件は被告長谷川が大型貨物自動車を運転して、事故現場交差点を直進する際に、反対方向から自転車に乗つてきて道路を横断しようとした被害者と接触した事故であるが、被害者にも、飲酒して、歩車道の区別ある道路の車道上を右側走行し、横断歩行帯を信号に従つて横断すべきところを信号を無視して斜めに横断し、かつ他の交通の安全確認を怠つた過失があるから、少なくとも七割の過失相殺をするべきであると主張する。

第三争点に対する判断

一  損害額

1  逸失利益[主張額五五八六万八二一六円] 五五八六万八二一六円

被害者は二八歳の男性で、東成金属株式会社に勤務し、昭和六三年度は事故日までに三九〇万八四三二円の給与を受けたので、その収入は年間に換算すると四六九万一一八円となる(甲四の一、二)。そこで、生活費割合を三割、就労可能年数を三九年としてライプニツツ方式により算定すべきである。

4,690,118×(1-0.3)×17.0170=55,868,216

2  原告ら固有の慰謝料[主張額合計三〇〇〇万円] 二五〇〇万円

被告長谷川が重傷の被害者を放置して事故後逃走したことなど、本件諸般の事情に照らして原告幸枝につき一一〇〇万円、同大輔及び同さやかにつき各六〇〇万円、同弘及び同ミツ子につき各一〇〇万円を相当と認める。

3  葬儀費用 一〇〇万円

原告幸枝の支出した葬儀費用中一〇〇万円を本件事故と相当因果関係に立つ損害と認める。

4  損害の填補 二五〇〇万円

原告らが自賠責保険金から二五〇〇万円の支払いを受け、原告幸枝が一二五〇万円、原告大輔、同さやかが各六二五万円ずつ充当したことは原告らの自認するところである。

二  当事者の過失割合

本件事故現場の状況は別紙見取図記載のとおりであるところ、被告長谷川と被害者が進行した道路(車道幅員八・二メートル)の両側には民家が立ち並んでおり、道路には最高速度四〇キロ毎時の規制がなされている。なお、現場は押しボタン式の信号機が設置されているが、交通整理は行われていない交差点である。同被告は、藤沢方面から町田方面へ、牽引車(トラクター)に被牽引車(セミトレーラ)を連結した事業用大型貨物自動車を運転して、時速約五〇キロメートルで進行していたが、深夜のため前後に車等はなく、右道路の交通は閑散とした状況であつた。同被告は別紙見取図<1>地点で自車進路上の前方約五六メートル先の別紙見取図<ア>点に、自転車で道路右側を対向進行してくる被害者を認めたが、被害者は現場交差点を直進するものと軽信して、その動向を注視せず、被害者との安全を確認しないで、そのままの速度で進行した過失により、別紙見取図<3>地点で、左方から右方へ横断中の右自転車を前方約一九・五メートルの<イ>点に発見し、危険を感じて急ブレーキをかけながらハンドルを右に切つたが間に合わず、衝突したことが認められる。なお、同被告は事故後逃走して、被害者を救護する等必要な措置を講ぜず、かつ事故発生の事実を警察官に報告しなかつた。また被害者は、当日午前二時頃までに、日本酒二合、ビール1本くらいの飲酒をしていた。(甲六の一、二、七、乙一の一ないし四、六、七[司法警察職員に対する供述調書]、八)

この事実によれば、被害者にも安全を十分に確認しないで横断をした過失があることが認められるが、上記道路及び交通の状況、両者の車種等諸般の状況に照らして、その斟酌すべき割合は概ね三割と認めるのが相当である。

三  以上の事実を前提とすると、被告らが原告らに支払うべき損害額は次のとおりとなる。

原告幸枝 一五四五万三八七五円

55,868,216×(1-0.3)=39,107,751

39,107,751×1/2+(11,000,000+1,000,000)×(1-0.3)=27,953,875

27,953,875-12,500,000=15,453,875

原告大輔・同さやか 各七七二万六九三七円

39,107,751×1/2×1/2+6,000,000×(1-0.3)=13,976,937

13,976,937-6,250,000=7,726,937

原告弘・同ミツ子 各七〇万円

1,000,000×(1-0.3)=700,000

四  弁護士費用中、原告幸枝につき一四〇万円、原告大輔・同さやかにつき各七〇万円、原告弘・同ミツ子につき各七万円を本件事故と相当と因果関係に立つ損害と認める。

(裁判官 清水悠爾)

別紙 <省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例